開業前のスクール代は経費にできる?計上のルールと注意点を解説

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開業前のスクール代は、条件を満たせば経費になる


開業準備には、知識を身につけるための勉強も含まれます。
「開業準備のためにスクールや講座に通ったが、この費用は経費になるの?」そのような疑問を持つ人は多いはずです。
実は開業前の支出は、条件を満たせば「開業費」として経費に計上できます。
ただし、内容によっては経費として認められないケースもあるため注意が必要しなければいけません。

この記事では、開業前のスクール代を経費にする方法と、仕訳・計上のポイントをわかりやすく解説します。

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開業前のスクール代は「開業費」として経費にできる?


事業をはじめるためにかかった費用は、開業費として経費計上できます。
開業費を計上することは、開業してから節税するためにも重要なので開業にかかった費用は漏れなく計上するようにしてください。

ここでは、開業するためにスクールや講義を受講した時の費用は開業費に含まれるかどうかについて解説しています。
これからセミナーなどを受講する人も認められるために必要な条件を知っておいてください。

結論:開業に直接関係するスクールなら経費にできる

開業準備のためのスクール代は、事業に直接関係する場合に限り「開業費」として経費に計上できます。
開業費は、開業を決意してから実際に開業するまでの様々な費用が含まれます。開業にかかる出費の記録は領収書を管理して計上漏れがないようにしてください。

開業費は、節税においても重要な意味があり、繰延資産として計上可能です。
繰延資産は、支出のうちでその効果が1年以上に及ぶものです。貸借対照表の資産の部に計上して、毎年少しずつ経費にできます。

繰延資産の償却の計算は、60カ月の均等償却または任意償却によるものとされています。繰延資産の金額に応じて節税面で有利になる方法で償却可能です。
ただし、経費にできるのはあくまで開業に直接関係する費用です。趣味や自己啓発など私的目的の講座は、事業関連性が認められず経費に算入できません。
必ずどういった理由で開業に関わっているのかを説明できるようにしておいてください。

開業費と経費の違い

開業のための準備で受講するスクール代は開業費として計上できます。開業費として計上してから開業後に償却して経費にするのが正しい処理です。
開業費は、一般的な経費とは性質が違います。混同することが内容に以下で違いを確認してください。

開業費 開業費(資産)としていったん計上し、後で経費化する
経費 発生した時点で経費にする

開業費として計上できるのは、開業前に発生した費用です。開業後に発生した費用は、その時点で事業のために使われた支出として、即時に経費として計上できます。
その場合は、スクール代であれば「研修費」や「教育費」といった扱いです。

このように、支出のタイミングによって処理方法が異なります。区分して領収書を管理することになるので、表や図で開業前と開業後の違いを整理して理解することが重要です。

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開業費として認められる条件


開業費として認められるのは、開業準備期間中に支出された費用であり、開業を目的として計画的に支払われたものである必要があります。
それぞれの要素に分けて開業費として認められる条件を整理します。

1.開業準備期間中に支出された費用であること

スクール代を開業費として計上できるのは、開業準備に該当する期間中に支出された費用であることが前提です。

この開業準備である期間とは、明確に規定されているわけではありません。
開業届を提出の前で、実際に事業化に向けた準備が進行していれば開業費として計上可能です。

開業準備期間とは、単なる検討段階ではなく、事業計画の策定・物件調査・資金調達などを具体的に行っている時期をいいます。
将来的に開業するか未定の段階で支払った受講料は、開業準備とは認められず、開業費として処理することはできない可能性があります。

2.事業内容と支出内容に明確な関連があること

開業費として認められる支出は、開業する事業と内容的に明確な関連を持っている必要があります。
税務上、開業費は「開業のために特別に支出した費用」であることが求められます。
そのため、受講内容が将来の事業活動に直接役立つと判断できるものしか開業費に計上できません。

開業のために通ったスクール代だとしても受講目的が開業後の売上や業務に結びつく合理的な理由を持っていなければ、事業関連支出とは認められないことがあります。
開業とどのように関連しているのか説明できるように準備してください。

3.支出目的の合理性と証拠資料が保存されていること

同じスクール代であっても自己研鑽や趣味、自己投資の費用は開業費には計上できません。
支出目的が合理的であることを説明できなければ、開業費としての正当性を立証できなくなってしまいます。
税務署から照会を受ける時に備えて、客観的な証拠は必ず残しておくようにしてください。

具体的には、受講証明書、領収書、支払い明細、講座の内容を示す資料(パンフレットやWebページ)などを整理し、支出の目的と内容を明確に示せるようにしておきます。
証拠資料が不十分な場合、私的支出と判断されるリスクが高まり、開業費として認められない可能性があります。
スクールのパンフレットや資料と領収書をセットにして、ファイルなどで保管するようにしてください。

4.開業計画との一貫性があること

スクール代を開業費として計上するにはスクール受講が、開業へ向けた一連の準備の中で必要な行為として位置づけられている必要があります。
事業計画書や資金計画書、準備スケジュールなど、開業に向けた実際の行動と整合していることが確認できれば、事業との関連性がわかりやすく開業準備費用としての実態が認められやすくなります。

一方で単発的な受講や、開業との関連性が薄い支出は「将来のための自己投資」とみなされ、開業費には該当しません。
開業計画のどの段階で何のために受講したのかがわかるようにスケジュールも記録しておくと後から見返す時に便利です。

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開業前のスクール代で経費になる・ならない具体例


開業前のスクール代には、開業費として経費計上できるものとできないものがあります。以下に例でまとめたので確認してください。

経費になる例 ・食品衛生管理講座
・ネイルスクール
・整体師の講座
・(スクール開業のための)プログラミング講座
経費にならない例 ・英会話スクール
・ヨガ教室
・ゴルフレッスン
・(開業の関係のない)料理教室

どういった費用であれば開業費になるのか、以下では詳細に記載しています。

経費になるスクール代の例

経費として計上できる費用は事業に直接関係しているものです。

飲食店開業を目指して料理教室やカフェ経営スクールに通う場合、その内容が「調理技術」「店舗運営」「衛生管理」など事業に直結していれば開業費として認められます。
例えば、食品衛生責任者養成講習、ラテアートの講座などは、開業後に実際の業務に必要な知識として税務上も妥当とされています。

整体院・ネイルサロン・エステサロンなどの技術系スクールは、開業のために専門スキルを習得する明確な目的があるため、開業費として計上可能です。
具体的には整体師の養成講座、ジェルネイルの技能試験、美容機器操作に関する講座などが該当します。

また、Webデザイン・プログラミング・動画編集など、開業後にクライアントへ提供するサービス内容と一致するスキル講座は経費計上できます。
例えばHTML/CSSやWordPress関連の講座のように受講目的が明確に業務遂行に結びつく場合は経費対象と判断されやすいです。

経費にならないスクール代の例

経費にならないのは、業務との関連性が低い、直接関係ないようなスクール代です。

例えば、英会話教室や資格試験対策講座など、開業後の業務に直接関係しない一般的な学習目的の費用は一般的に経費計上できません。
「日常英会話」「TOEIC対策講座」「ファイナンシャルプランナー3級」などは、業種に明確に関係がない限りは、自己研鑽や私的支出とみなされます。

趣味のスクール代かどうかの判断が曖昧だと、税務調査で業務関連性を問われやすくなります。
「パン教室に通っているが、将来開業の予定はない」場合には趣味扱いです。
しかし、「1年以内にパン教室を開業予定で店舗契約を進めている」場合は開業費と認められる可能性があります。

また、開業予定の業種と受講内容が一致しない場合は、支出目的が私的と判断されます。
カフェ開業を予定しているのに、ヨガインストラクター講座を受講していたり、美容室開業予定者が簿記講座に通ったりするのは、事業との関連が弱いので経費計上は認められません。

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スクール代を経費(開業費)に計上する手順


スクール代を経費に計上するには、その支出自体が経費に該当するものであり、適切に会計処理を行わなければいけません。
どういった手順で開業費を経費計上するのか以下でまとめました。

1. 開業届提出前に発生した費用を「開業費」で記録

開業準備期間中に支払ったスクール代は「開業費」勘定で記録しておきます。この段階では記録だけで、開業してから確定申告時に償却して経費化します。
確定申告は白色申告と青色申告があり、青色申告では任意償却が可能です。つまり、開業費を開業初年度に全額を経費にすることも分割して処理することもできます。
税制優遇措置もあるので、可能であれば青色申告にするようおすすめします。

2. 領収書・明細書を保存しておく

受講料の領収書や受講内容が記載されたパンフレットなどは、開業費としての根拠資料にできるので必ず保管してください。税務調査では支出目的の説明を求められます。
スクール名だけでなく講座内容や期間・金額を明確に残しておくようにしてください。

保存する書類は、電子データでの保存も可能です。青色申告では、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿の保存によって、最大65万円の控除が受けられます。
電子帳簿保存法の要件を満たす形で管理できるように努めてください。

3. 開業後に「繰延資産」として処理

開業日を迎えたら、記録しておいた「開業費」を繰延資産に振り替え、決算時に償却処理を行います。
青色申告決算書や収支内訳書で「開業費償却額」を記入し、正しく経費計上することで税務上の整合性を保てます。

開業費の償却期間は、税務上 60カ月(5年)で均等償却または任意償却のいずれかの方法が認められていて、60カ月を過ぎても未償却残高を償却費として必要経費に算入することは可能です。
ただし、長期にわたり残高を放置すると不自然と見なされる可能性があります。
開業費を過去の年度で経費計上していないことを資料などで確認できるように、台帳などで管理しておいてください。

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開業費のスクール代の仕訳例


開業費を計上する時には、タイミングごとに仕訳が必要です。以下ではそれぞれの仕訳をまとめています。
開業準備中に支払った開業費は「開業費/現金」または「開業費/普通預金」として仕訳する。

借方 貸方
開業費 100,000 現金 100,000

開業後に経費化する時には「開業費償却/開業費」と仕訳し、償却額を決算書に反映させます。

借方 貸方
開業費償却 100,000 開業費 100,000

資産として計上する時には、「繰延資産/開業費」となります。会計ソフトを利用する場合は「繰延資産」区分を選択してください。
期末の自動償却処理を設定しておくとミスを防げます。

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開業前のスクール代を経費する際の注意点


スクール代を開業費として計上する処理は、頻繁に行われるものではありません。そのため処理に悩むケースもあります。
どういった点に注意すればいいのかまとめました。

開業との関連性を明確にしておく

スクール代であっても、業務との関連性が不十分な講座は「私的支出」と判断されるおそれがあり、経費否認されるリスクがあります。
スクール受講が開業準備の一環であると説明できるよう、開業計画書に受講理由を含めて記録しておくようにしてください。

講座内容や目的が開業後の事業にどのように活かされるかを、簡潔にメモや資料で残しておくと税務調査でも役立ちます。
税務署から説明を求められた際に、関連性を口頭で説明するだけでなく、その時々の記録や書面で示せるようにしてください。

領収書や受講証明書を必ず保管する

講座費用の領収書、受講証明書、カリキュラムなどの資料は、税務調査時に支出の正当性を示す根拠です。
加えてスクールのWebページを印刷または保存し、講座内容・期間・金額がわかる形で整理しておくようにします。
電子帳簿保存法に準拠した形で電子データ管理を行う場合は、検索要件など保存基準にも注意しなければいけません。

開業費の金額が過大にならないようにする

開業費として計上する金額が大きすぎると、私的支出を含んでいると疑われ、税務署から否認される可能性があります。
複数の講座を受講した場合は、開業に直接関係する部分のみを開業費として計上し、それ以外は除外してください。

開業費の総額が不自然に高額にならないよう、ほかの開業準備費用とのバランスを考慮して整理するようにします。

専門家に相談して適正処理を確認する

開業費の扱いは判断が難しいため、税理士や会計士に事前確認することで、後のトラブルを防げます。

初めて青色申告を行う個人事業主は、開業届と帳簿設定の段階で処理区分を相談しておくと良いです。
税務署や商工会議所の無料相談会を利用すれば、開業費や経費の線引きに関するアドバイスを受けられるので積極的に活用してください。

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まとめ:開業準備のスクール代も、正しい処理で経費にできる

開業に直接関係するスクールや講座の費用は「開業費」として資産計上し、開業後に償却することで経費化できます。
ただし、趣味や自己啓発目的の講座は事業関連性が認められず、経費に含めることはできません。
開業費を計上すれば、節税しやすく事業の初期に資金的余裕を生み出せます。領収書管理や仕訳処理を正しく処理して事業に弾みをつけてください。


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(編集:創業手帳編集部)

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