【社労士監修】労働基準法が2026年に改正される?厚生労働省の検討内容と企業が今できる準備

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2026年以降の労働基準法改正をめぐる最新の検討状況と企業が準備すべきこと


労働基準法は、労働時間・賃金・休日などについて最低限の基準を定めた、労働法制の基本となる法律です。最近、「労働基準法が2026年に改正されるのではないか」といった情報を目にする機会が増えています。
現在、厚生労働省が設置した「労働基準関係法令研究会」において、労働基準法の見直しに向けた検討が進められていますが、改正案が国会に提出されているわけではなく、改正内容や時期が正式に決まっている状況ではありません。そんな中でも、非常に注目度が高まっています。
労働基準法は、時代背景や働き方の変化に応じて見直されてきましたが、制度改正や例外規定が積み重なり、全体像が分かりにくいという課題も指摘されています。

こうした背景を踏まえ、本記事では、研究会報告書をもとに、2026年前後を見据えた労働基準法改正の主な論点と、企業が今から意識しておきたいポイントを整理します。

監修:澤田 裕一(さわだ ゆういち)社会保険労務士法人ブレインズ 代表社員・社会保険労務士
法政大学卒。起業家として複数企業を立ち上げ、現在も複数の法人を経営。
自身の約30年に渡る経営経験を基盤に、組織づくりや現場の業務改善、人材マネジメントなど経営全般の支援を提供。
社会保険労務士法人ブレインズでは助成金専門チームを設置し、法令遵守に基づく助成金申請から運用定着まで一貫してサポートできる体制を構築。

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なぜ労働基準法の改正が検討されているのか


労働基準法は、労働者の権利を守るために、労働時間や賃金、休日・休暇などについて最低限の基準を定めた法律です。その制度設計は、原則として一つの企業で、一定の時間・場所において働くことを前提としたものになっています。

しかし現在では、働き方改革やダイバーシティの進展により、働く人の状況や働き方は大きく変化しています。勤務時間や働く場所が多様化しているだけでなく、副業・兼業を行う人も増え、「一つの会社で完結する働き方」を前提としないケースが広がっています。こうした変化の中で、現行の労働基準法が前提としてきた考え方と、実際の働き方との間にズレが生じています。
例えば、労働時間の管理や、業務と私生活の線引きについて、従来の枠組みでは整理しきれない場面が増え、企業・労働者の双方にとって判断が難しくなっています。さらに、高齢化の進展により、長く働き続けることが一般的になる中で、心身への負担に配慮した働き方を、どのように制度として位置づけるかという課題も顕在化しています。

このように、働き方の多様化や副業・兼業の広がり、高齢化といった社会変化と、労働基準法の制度設計との間に生じているズレを整理し、実態に合った分かりやすい制度へ見直す必要があることが、労働基準法の改正が検討されている背景です。

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2026年以降の労働基準法改正を見据えて議論されている課題


労働基準法の見直しに向けては、さまざまな課題について議論が進められています。では、現時点ではどのような点が論点とされているのでしょうか。
ここでは、現在検討の対象となっている主な内容を整理して紹介します。なお、以下で取り上げる内容は、現時点ではいずれも検討段階にあるものであり、具体的な改正内容や時期が決定しているわけではありません。
今後の議論の進展によって、方向性や内容が変わる可能性がある点には注意が必要です。

フレックスタイム制の部分的な活用に関する検討

フレックスタイム制は、一定期間内の総労働時間をあらかじめ定めたうえで、日々の始業・終業時間や労働時間を労働者が調整できる制度です。制度自体は以前から存在していましたが、働き方改革の流れの中で見直しが行われ、より柔軟に活用できる仕組みへと整理されてきました。

仕事と私生活の時間を調整しやすい点から、ワークライフバランスの確保につながる働き方として注目されています。一方で、現行の制度では、フレックスタイム制を部分的に適用することが難しく、例えば、テレワークを行う日と通常勤務の日が混在するような働き方では、運用しづらいケースもあります。

こうした課題を踏まえ、フレックスタイム制については、コアデイの設定などにより、1日単位で柔軟に活用できる仕組みが考えられないかといった点について、見直しの議論が行われています。

週44時間特例措置の在り方に関する検討

労働基準法には、商業・サービス業など一定の業種において、常時10人未満の事業場を対象に、法定労働時間を1週44時間とする「週44時間特例(特例措置)」が設けられています。この制度は、事業規模の小さい事業場への配慮として位置づけられてきました。

もっとも、近年の検討においては、対象となる事業場に関する調査結果などから、実務上はこの特例が十分に活用されていない実態が示されています。制度の存在自体が十分に認識されていない可能性や、運用面での実効性・メリットが必ずしも明確でない点が課題として指摘されています。
また、同一の業務内容であっても、事業場の規模によって法定労働時間が異なる仕組みについては、制度として分かりにくいだけでなく、公平性の観点からも整理が必要ではないかとの指摘があります。さらに、長時間労働の是正を目指す近年の労働時間政策の方向性との関係についても、整合性をどのように考えるべきかが課題とされています。

こうした点を踏まえ、現在は、週44時間特例について、制度の趣旨や実態を改めて整理したうえで、その在り方をどのように見直すべきかが検討されており、現時点では具体的な結論が示されている段階ではありません。

連続勤務に上限を設けることの検討

現行の労働基準法では、法定休日として、1週間に少なくとも1日の休日を付与することが原則とされています。一方で、業務の都合や業態上の理由から週単位での休日確保が難しい場合には、4週間に4日の休日を付与すれば足りるとする、いわゆる「4週4休(変形週休制)」が例外的に認められています。もっとも、この仕組みでは、特定の4週間の中で4日の休日を確保すればよいことから、制度上は極めて長期間の連続勤務が可能となる構造になっています。

理論上は、休日の配置次第で最長48日間の連続勤務が生じ得る点が、制度上の課題として指摘されています。また、精神障害に関する労災認定においては、14日以上の連続勤務が心理的負荷の判断要素の一つとされており、こうした連続勤務が労働者の心身の健康に与える影響は無視できないとされています。

このため、連続勤務による健康リスクを抑制する観点から、現行の4週4休の仕組みについて、休日の与え方や連続勤務日数に一定の歯止めを設けるべきではないかという点が論点とされています。具体的には、より短い周期で休日を確保する仕組みや、14日を超える連続勤務を防ぐための制度設計について、検討が進められている段階です。

勤務間インターバル制度の義務化に関する検討

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務が終了してから翌日の始業までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保することにより、労働者の睡眠時間や私生活の時間を確保し、心身の回復を図るための制度です。この制度は、労働時間等設定改善法において、事業主の努力義務として位置づけられています。

しかし、努力義務にとどまっていることもあり、制度の導入は必ずしも進んでいないのが現状です。調査によれば、導入している企業の割合は依然として低水準にとどまっており、導入を予定または検討している企業も限られています。こうした実態を踏まえ、勤務間インターバル制度については、現行の努力義務のままで十分な実効性が確保できているのかという点が課題とされています。

現在は、制度の趣旨や効果を踏まえた周知・支援の在り方に加え、より実効性のある導入促進策や法制度上の位置づけをどのように整理すべきかといった点について、検討が行われている段階です。

法定休日を特定することの義務化に関する検討

法定休日とは、労働基準法に基づき、使用者が労働者に対して付与しなければならない休日を指します。現行の労働基準法では、原則として1週間に1日以上の休日を与えることが求められているものの、どの日・どの曜日を法定休日とするかを事前に特定する義務は設けられていません。

一方で、現在は多くの企業において週休2日制が採用されており、その結果として、法定休日と法定外休日の区別が曖昧になっているケースも少なくありません。とりわけ、休日労働に対する割増賃金の取扱いは、法定休日か法定外休日かによって異なるため、法定休日が明確にされていない場合、企業と労働者の間で認識の違いが生じ、トラブルにつながるおそれがあります。

こうした実務上の課題を踏まえ、法定休日について、あらかじめ特定しておくことが望ましいのではないかという点が論点として挙げられています。現在は、休日制度の分かりやすさや、労使双方の予見可能性を高める観点から、法定休日の特定の在り方をどのように整理すべきかについて、検討が行われている段階です。

つながらない権利のガイドライン検討

「つながらない権利」とは、労働時間外において、仕事に関する電話やメール、メッセージ等への対応を求められない、または対応を拒否できるという考え方を指します。
労働時間外は本来、労働者が使用者の指揮命令から解放される時間であり、私生活として尊重されるべき時間です。
もっとも、実務の現場では、業務時間外であっても、突発的な連絡や顧客対応を求められることにより、結果として労働者が私的時間に仕事をせざるを得ない状況が生じることもあります。こうした状況が常態化すると、労働時間管理の不明確化や、心身の負担増加につながるおそれがあります。

この点については、海外において、労働時間外の連絡の在り方に一定のルールを設ける動きがみられる国もあり、労働者の休息確保やワーク・ライフ・バランスの観点から注目されています。一方で、日本では、現時点で「つながらない権利」を直接定めた法制度は存在していません

こうした状況を踏まえ、労働時間管理や健康確保の観点から、労働時間外の連絡の在り方について、どのような考え方やルールを示すことが適切かが論点となっています。現在は、法制化の是非も含め、まずは企業や労使が参考とできるガイドラインの策定といった対応が考えられないかという点について、検討が行われている段階です。

副業・兼業における労働時間通算ルールの見直しに関する検討

現行の労働基準法では、事業場が異なる場合であっても、労働時間は通算して考えることとされています。そのため、副業・兼業を行っている労働者については、本業と副業・兼業それぞれの労働時間を合算したうえで、時間外労働の有無や割増賃金の算定を行う必要があります。

この仕組みの下では、企業側が他社での労働時間も含めた管理を行うことが前提となるため、割増賃金の算定や労働時間管理が複雑になりやすいという課題があります。こうした実務上の負担の大きさから、副業・兼業を認めることに慎重な姿勢をとる企業が少なくない点も指摘されています。

一方で、働き方改革を通じて、時間外労働の上限規制などにより、個々の労働者の長時間労働を抑制する制度的枠組みが整備されてきました。他方、副業・兼業の促進は、働き方の選択肢を広げる一方で、結果として労働者の総労働時間が増加する可能性を内包しています。

このように、現行制度の下では、労働時間を抑制する規律と、労働時間の拡大につながり得る働き方が併存しており、その接点に労働時間通算ルールが位置しているといえます。この通算ルールが、割増賃金の算定や労働時間管理を複雑にしている点が、実務上の課題として顕在化しています。そのため現在は、副業・兼業の広がりを前提としつつ、労働者の健康確保という原則を維持したまま、割増賃金の算定における労働時間通算の考え方をどのように整理すべきかが論点となっており、検討が行われている段階です。

年次有給休暇取得時の賃金算定方式の見直しに向けた検討

年次有給休暇を取得した際の賃金については、現行の労働基準法において、「通常の賃金」「平均賃金」「標準報酬日額」のいずれかの方法により支払うことが認められています。このうち「通常の賃金」とは、有給休暇を取得した日についても、通常勤務した場合と同様の賃金水準を支払う考え方であり、所定労働時間に対応して通常支払われる賃金を基礎として算定されます。基本給のほか、通常の勤務日において支給される固定的な手当が含まれますが、時間外手当や出来高給など、勤務実績によって変動する賃金は含まれません。

一方、「平均賃金」による方法は、直近の賃金締切日前3か月間の賃金総額を、その期間の暦日数で除して算定する方式であり、賃金が日々変動する労働者にも対応できる制度とされています。ただし、日給制・時給制の労働者の場合、実際に就労した日の賃金水準よりも低くなるケースがあり、有給休暇を取得すると賃金面で不利になると感じられることがあります。

また、「標準報酬日額」による方法は、健康保険の被保険者について、労使協定を締結した場合に限り選択できる算定方法です。賃金計算の簡素化というメリットがありますが、実際の賃金水準との乖離が生じる可能性があり、労働者にとって必ずしも実態に即したものとは限りません。

これらの背景を踏まえ、有給休暇取得時の賃金については、実際の労働日に支払われる賃金水準と整合しやすい「通常の賃金」を原則とする方向での見直しが検討されています。ただし、歩合給の割合が高い場合や、勤務形態や賃金構成が複雑な場合には、「通常支払われる賃金」をどのように整理するかが実務上の課題となることから、制度の分かりやすさと企業実務の実行可能性との両立をどのように図るかが、引き続き検討されている段階です。

なお、労働基準法の見直しに向けた議論では、労働者や事業の定義、労使コミュニケーションのあり方など、制度の前提となる考え方についても整理の必要性が指摘されています。

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2026年以降の労働基準法改正を見据えて企業が準備しておきたいポイント

現時点では、労働基準法について具体的に改正が行われるかどうか、また仮に改正される場合であっても、その内容や施行時期は明確に決まっていません。制度の在り方や課題について議論が進められている段階にあります。

もっとも、今後の検討の結果として法改正が行われる可能性も踏まえると、改正の有無が決まってから対応を始めるのではなく、あらかじめ自社の労働環境や制度を整理しておくことは有効といえます。仮に将来、法改正が決定された場合であっても、事前に準備を進めておくことで、慌てることなく対応することが可能になります。

以下では、こうした状況を踏まえ、企業が現時点から取り組むことのできる準備について抜粋して解説します。

週44時間特例措置廃止への準備

現時点では、週44時間特例の廃止や具体的な制度変更が決定しているわけではありません。しかし、仮に今後の法改正によりこの特例が廃止された場合、法定労働時間は原則どおり週40時間となり、現在週44時間を前提に運営している事業場では、勤務時間の見直しが不可避となります。その結果、同じ業務量や労働時間を維持しようとすれば、時間外労働が発生しやすくなり、割増賃金の支払いによる人件費の増加や、シフトの組み直しといった対応が求められることになります。この点を踏まえると、法改正の流れの中で今行うべき対応は明確です。

例えば、多くのクリニックでは、平日の終日診療と土曜日の半日診療を組み合わせることで、結果として週40時間を超える勤務が常態化しています。この運用が、特例があるからこそ可能になっているのか、それとも勤務の組み方次第で週40時間以内に収める余地があるのかによって、将来の対応は大きく変わります。

そのため、今後の準備として、診療時間だけでなく、診療前後の準備や記録業務を含めた実際の労働時間を正確に把握し、週40時間を基準に置いた場合に、どの部分で時間外労働が発生するのかを整理することです。この整理ができていれば、廃止や制度変更となった場合でも、人件費増加をどの程度見込む必要があるのか、診療時間やシフトをどのように見直す必要があるのかを、具体的に検討することができます。

このように、週44時間特例措置の見直しは、単なる制度変更の話ではなく、週40時間への移行を前提とした場合に、人件費と所定労働時間にどのような影響が生じるのかという経営上の問題に直結します。結論が出ていない今だからこそ、こうした影響を具体的に想定し、現状を整理しておくことが、法改正への最も現実的な備えとなるでしょう。

連続勤務上限規制への準備

連続勤務をめぐっては、労働者の健康確保の観点から、現行制度の在り方を見直す必要があるのではないかという議論が進められています。
今後、法改正によって、連続勤務日数に一定の上限が設けられる、あるいは実質的に14日以上の連続勤務を認めない方向で制度が整理される可能性も指摘されています。こうした改正が行われた場合、形式上は休日を設定していたとしても、実態として連続勤務が発生していれば是正の対象となる運用は、これまで以上に問題となることが想定されます。

特に注意が必要なのが、当初は休日としていた日に、臨時の業務対応として出勤が発生するケースです。予定外の休日出勤が重なった結果、意図せず14日以上の連続勤務となるような運用は、改正後の制度下では許容されなくなる可能性があります。

例えば建設業では、天候や工程の遅れ、突発的な現場対応などにより、当初の勤務計画どおりに休日を確保できない場面が少なくありません。このような業種特性がある場合、現行制度の感覚のまま運用を続けていると、法改正後には「想定外に違反状態となっている」リスクが高まることになります。そのため、法改正が確定していない現時点においても、将来を見据えた準備として、臨時の休日出勤を含めた実態ベースでの連続勤務状況を把握しておくことが重要です。あわせて、休日出勤が発生した場合に、代替休日を確実に付与できる体制になっているか、結果として14日以上の連続勤務が生じない勤務設計になっているかを点検しておく必要があります。

連続勤務規制の見直しは、単に新しいルールに対応するという話ではなく、これまで「例外的」「一時的」として許容されてきた運用を、前提から見直すことを企業に求めるものになる可能性があります。将来の法改正に備え、いまのうちから勤務実態と休日管理の在り方を整理しておくことが、現実的かつリスクの少ない対応といえるでしょう。

勤務間インターバル制度義務化への準備

勤務間インターバル制度については、労働者の健康確保や過重労働の防止を目的として、その在り方を見直すべきではないかという議論が進められています。
現行制度では努力義務にとどまっているものの、今後、法改正によって一定時間以上の休息確保が義務づけられる可能性も想定されます。このような見直しが行われた場合、単に始業時刻や終業時刻を調整するだけでは対応できない業種も少なくありません。特に、早朝業務と日中業務が組み合わさる業態では、勤務時間の組み替えだけでなく、業務の設計そのものを見直す必要が生じます。

例えば新聞販売店では、早朝3時に出勤して朝刊配達を行い、いったん帰宅した後、午後から再び出社して夕方6時頃まで業務を行うといった勤務形態が見られます。このような働き方は、表面的には途中に空き時間があるように見えても、実態として十分な休息時間が確保されているとは言い難いケースがあります。勤務間インターバルの確保が義務化された場合、こうした勤務形態はそのままでは成立しにくくなり、抜本的な見直しが避けられなくなるでしょう。さらに、こうした問題は、人材確保が年々難しくなり、業界全体が縮小傾向にある分野において、より深刻な影響を及ぼします。新聞販売業のように、担い手不足が慢性化している業界では、限られた人員で業務を回しているケースが多く、勤務時間や休息時間に制約が加わることで、現行の運営モデル自体が成り立たなくなる可能性があります。このような状況下では、単に人を増やすことで解決するのは現実的ではありません。

そのため、勤務間インターバル制度への備えとしては、人員配置やシフトの調整に加え、現在行っている業務が本当に必要なものかを見直す「仕事の棚卸」が不可欠となります。業界慣行として続いてきた業務や、役割が曖昧なまま残っている作業、効率化や外部委託によって代替可能な業務を整理することで、労働時間そのものを縮減できる余地が見えてきます。

勤務間インターバル制度の見直しは、単なる労働時間規制の強化ではなく、人材難が進む中でも事業を持続させるための経営課題として捉える必要があります。法改正が確定してから対応を迫られるのではなく、いまの段階から勤務実態と業務内容を可視化し、無理のない働き方に向けた再設計を進めておくことが、将来の制度変更に備えるうえで最も現実的な対応といえるでしょう。

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労働基準法改正への備え方:社労士 澤田裕一のポイント

社労士 澤田裕一

今後の労働基準法の見直しに備えるにあたって、注意すべきなのは、
いきなり就業規則の改定に着手することが必ずしも最適な対応とは限らない
という点です。制度が確定していない段階で規程だけを先行して整えると、後からの修正が前提となり、かえって現場の混乱を招くおそれがあります。

まず重要なのは、法改正の方向性を踏まえたうえで、会社としてどのような働き方を目指すのかを明確にすることです。そのうえで、「いつまでに」「だれが責任を持って」「何を」「どのような手順で見直していくのか」といった実務レベルの整理を行う必要があります。労働時間や休日の扱い、業務の分担方法などについて、現状を把握し、どこに課題があるのかを洗い出す作業が、すべての出発点になります。

この段階では、完璧な制度設計を目指す必要はありません。むしろ、試行的な運用を通じて課題を把握し、必要に応じて見直していくという姿勢が現実的です。いまのうちから、計画を立て、実行し、その結果を検証し、改善につなげるというPDCAの流れを意識して準備を進めておくことで、法改正が具体化した段階でも柔軟に対応できる体制を整えることができます。

就業規則の改定は、そのような検討や運用を踏まえたうえで行うべき最終工程の一つにすぎません。法改正への備えを「書類対応」で終わらせるのではなく、会社としての方針と現場の実態をつなぐプロセスとして捉え、いまの段階から段階的な準備を進めていくことが、結果として最も実務に即した対応といえるでしょう。

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まとめ・2026年の法改正に向けて必要な準備を進めよう

今後の労働基準法の見直しについては、具体的な改正内容や施行時期が段階的に明らかになっていくことが想定されます。検討段階で示されている方向性と、実際に制度として導入される内容との間には調整が入ることも少なくありません。

そのため、断片的な情報だけで判断するのではなく、法改正全体の流れを継続的に把握しながら、実務への影響を見極めていくことが重要になります。
本記事で取り上げた論点についても、今後の議論の進展に応じて、企業に求められる対応や準備の内容がより具体化していくと考えられます。労働時間や休日の管理、業務設計の見直しなどについては、制度が確定してから一気に対応するのではなく、いまの段階から方向性を整理し、段階的に備えていくことが、結果として現場の負担を抑えることにつながります。

こうした法改正への備えを進めるにあたっては、制度の動向を正確に把握し、実務に落とし込むための情報収集も欠かせません。経営や労務に関する最新の動きを把握しながら、自社の状況に照らして判断していくことが、今後の労働環境整備において重要な視点となるでしょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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